スリー・ビルボード (ネタバレあり) TIFFjpトークショーまとめ&考察:ミルドレッドは本当に「格好いい女」か

【注意事項!】

 ※この記事は「 スリー・ビルボード 」鑑賞済みの方向けの記事になります。昨年11月東京国際映画祭上映時の町山智浩さんのトークショー内容をまとめたもの+αで、結末やストーリー上の重要な要素にも容赦なく触れています。鑑賞前の人は事前知識なしで本編を観るのをオススメします。

※不十分な点、誤り等があった場合はコメント欄などで連絡してもらえると助かります。

※書いた本人はマクドナー作品の長編映画作品のみ鑑賞済みです。舞台は鑑賞したことが無いので舞台に絡めた内容はありません。(2月11日更新)

 

 

 ここから先は注意事項を読んだ前提で内容が進んでいきます。

 黒色は町山さんや質問者の発言内容、青色は私の補足とか感想、トークショーで言及していない内容になります。英語記事中心ですが可能な限りソースを付けたのでそちらも参照してみてください。

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 毎度のことながら、かなり長い。一応目次は作りましたが…書きたいことが多すぎたせいで自分でも信じられないぐらい長くなってしまいました。10000字越えという特大ボリューム記事ですがよろしければ最後までお付き合いください。

※ ★はトークショーで一切言及していない内容です

※鹿のやつVFXメイキングっぽいもの見つかりました…

※ 考察増やしました…もう見納め予定なのでこれ以上は増やさないはず。はず。

 

トークショーの内容など

舞台のミズーリ州について

 これは本編上映前に町山さんが話した内容です。過去記事にも掲載しましたが一応こっちにも簡単に載せておきます。

 

 ミズーリ州はアメリカの中心あたりにある州です。そのため、昔の南北戦争では州内で対立が起きていました。また、ミズーリ州ファーガソンでは白人警官が丸腰の黒人を射殺するという事件が発生し、アメリカの閉塞的な田舎では未だに白人が黒人を見下すということを世界中に知らしめてしまいました。

 

 原題が "Three Billboards Outside Ebbing, Missouri" というこんなに長いタイトルなのもなんか分かるような。一部のレビューはファーガソンの事件にも言及しているみたいです。※考察追記その2でタイトルのことに再度触れました。

‘Three Billboards outside Ebbing, Missouri’ is a vigilante comedy for our age - The Washington Post

“Three Billboards Outside Ebbing, Missouri” is shot through with stinging, sometimes breathtakingly direct commentaries about racism and policing in a community that even though it’s fictional, lies firmly within the orbit of Ferguson .

 

 あとミズーリ州舞台の作品といえば、ウィンターズ・ボーンも。スリー・ビルボードにミルドレッドの元夫役で出演しているジョン・ホークスが出演しています。

 

アメリカに住んでいないと分からない話? 

  トークショーが始まると町山さんが真っ先に話した内容。

 

 アメリカに住んでいれば分かる話であるが、田舎のミズーリのバーでビールが1本4ドルもするのはおかしいみたいで、相場は大体2ドル以下とされているそうです。これはマクドナー監督がアメリカ人ではなくイギリス人だからそうなったのではないかということでした。

 

スリー・ビルボードを作ったきっかけ

 マクドナー監督がアメリカに来た際、スリー・ビルボードのあの看板のような意見広告を実際に見て、これを作ったのはもしかして女性ではないのか?ということでそこから主人公ミルドレッドが誕生。

最恐母VS警察!トロント観客賞の注目作とは - シネマトゥデイ

 

メインキャストのイメソン⁉

町山さんがラジオでスリー・ビルボードを紹介したときの内容です。

miyearnzzlabo.com

 この記事でフラナリー・オコナーについての紹介がありましたが、販売されずAmazonでプレミア化していた短編集がスリー・ビルボード公開を期に、筑摩書房から復刊されることが決まりました。上巻に収録されている「 善人はなかなかいない 」がスリー・ビルボードを読み解くカギになるみたいです。

 

ミルドレッド役、フランシス・マクドーマンドについて

 上記リンクよりミルドレッドはフランシス・マクドーマンドを想定したキャラクターであると書かれています。 フランシス・マクドーマンドといえばファーゴが有名なだけあってスリー・ビルボードは南部版ファーゴみたいだと言われていました。ファーゴではいい人の役でしたが、スリー・ビルボードでは怒りに囚われた母親と役が対照的です。

 

 ミルドレッドの名前について、「 ミルドレッド・ピアス 」という小説が由来ではないかという説が出ました。( 女性が仕事をして1人で生きていく話だそうです。 )前作のセブン・サイコパスではサム・ロックウェル演じるビリー・ビックルタクシードライバー( 1976 )に出てくるロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィス・ビックルを意識してるみたいなので、ミルドレッドも名前に元ネタがある可能性はあると思います。( 詳しくは後述 )

 

 また、音楽が全体的に西部劇でミルドレッドはガンマンのポジションではないかとも。個人的には、アメリカも象徴しているのではないかと思いました。これは若干こじつけているかもしれませんが、ミルドレッドは紺色のつなぎに赤色がチラッと見える服装をまとっています。青と赤でアメリカの星条旗に見えなくもないかなと勝手に思っています。バンダナはディア・ハンターかな?

 それにしても、つなぎを着てここまで様になる女優って思いつかないな…

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 別作品でゲット・アウトもアメリカ星条旗を意識していると思われる服装もありました。これはストライプ柄といい特に意識しているんじゃないかと。

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 フランシス・マクドーマンドのことは恥ずかしながら、この映画で初めて知ったのですが…現代ではなく、うんと昔の役者だったとしてもその時代の役者として大成しているだろうなと感じました。ゴールデン・グローブ賞のスピーチが素晴らしかったので、アカデミー賞でもスピーチ聞きたいなぁ…

 スピーチはユーチューブにあるので見てほしい。和訳記事も転がってたはず。( 粗いとこがあるけど ) 

 

赤色が目立つ?

  この映画は赤い看板といいとにかく赤色が目立っていました。予告も赤色基調でしたし。ディクソンが母親と観ていた映画がドナルド・サザーランドの「 赤い影 」という作品であることをトークショーで指摘した人がいてびっくりしました。一瞬だったのに。看板といえば、燃えるシーンがありましたが、本当に燃やしているらしい。

 

 赤って怒りやバイオレンス要素のある色のイメージがあるのですが、そこからきているのだろうか…ちなみにミルドレッドが作った看板が赤色なのはどうやらマクドナー監督のアイデアだそうです。

Production Design: From the Streets of 'Detroit' To 'Ebbing, Missouri' | Hollywood Reporter 

 

映画の特徴、クライマックスについて

  この映画はクライマックスがあまり感じなかったのが特徴として挙がっていました。個人的にですが、マクドナー監督作品ヒットマンズ・レクイエム→セブン・サイコパススリー・ビルボードと新しい作品ほどクライマックス成分が薄まり、波が平坦になってきている気がします。

 

マクドナー監督は映画オタク⁉

許されざる者クリント・イーストウッド版)

 おそらく一番意識しているのではないかとされる作品がこの作品。この作品の登場人物は「 最初は〇〇な奴だと思っていたのに実は▲▲だった! 」というように物語が進むにつれて登場人物がチェンジしていきます。

 

 スリー・ビルボードではメインキャストがその役割を果たしています。ミルドレッドが最初は正義感のある良い母親だと思っていたのに、観るにつれて「 何か最初に抱いた印象と違う 」と思うようになります。娘や息子からも好かれていない描写もありました。署長は一見不真面目に見えるのに実は事件に真面目に取り組んでいたり、ディクソンは最初あんなにクズだったにも関わらず署長の手紙で改心し、事件に真剣に取り組むようになります。

 

 許されざる者ってなんか聞き覚えあるなと思ったら、高校の夏休みの課題で観た作品が許されざる者でした。今思えば昔の自分ナイスと思いつつもその時はそんな深く思わなかったのでもう一回ちゃんと観ようと思います。

 

 

赤い影( ドナルド・サザーランド

 ヒットマンズ・レクイエムは赤い影の殺し屋ver. これをトークショーで指摘した人相当映画に詳しいんじゃないかと思います。

 

 

監督ばんざい

 前作セブン・サイコパスはこれを基にしてるのではないかということでトークショーで挙げられた北野監督作品。

 

 

その男、凶暴につき

 セブン・サイコパスの作中において、主人公のマーティとビリーが映画館で観た映画。これも北野監督作品。

 

 

マクドナー監督は北野監督作品が凄く好きみたいです。

 

ディクソン、サム・ロックウェルについて

  ※彼に関しては推しだからというのと海外の雑誌など個別インタビュー記事の量が多いので内容も多めになってしまいました。今年はなんとオスカー候補といわれ、キャストの中でもかなり注目されています。

  前作のセブン・サイコパス同様、かなりおいしい役どころを演じている。セブン・サイコパスの時からマクドナー監督にとってのミューズ枠俳優だろうなと私の中では思っていたのですが、マクドナー監督がネット記事のインタビューでミューズ枠だって言っていました。やはりな!!!!

 

 町山さんがスリー・ビルボードサム・ロックウェルのために書いた、個人で賞を獲ってくれると嬉しいと思っていると言っていましたが、そのことについても書いてありました。今の段階で作品別だとスリー・ビルボードが賞の数が一番多く、アカデミー賞にもノミネートされたので良かったんじゃないかな。

Three Billboards Director Martin McDonah Interview | Collider

 

 どうやら町山さんによると、実際に会うと良い人で本人は日本で人気がないと気にしているとのこと。知名度が低いのと、あり得るとすればグリーン・マイルのクズ過ぎる役のインパクトが大きいのだろうか。母親に「 サム・ロックウェルはグリーン・マイルのクズ囚人役だ 」と言ったら認識してもらえたのでそのイメージが定着しているのかも。「 そんなことないって!好きな人いっぱいいるよ! 」と教えてあげたい。今作で本格的に日本でもブレイクしてほしい…

 

 撮影がヤバかったのはサム・ロックウェルがエビング広告社に単独で殴り込みに行く一連の流れが1ショットで行われていること。

 

 サム・ロックウェル演じるディクソンは実はゲイじゃないかということがABBAのチキチータを聞いていることから分かるそうです。( 詳しくは町山智浩さんのツイートを参照。 )そうでなくとも母親以外の女性の影がちらつかないこと、いろいろなセリフから察しがつくかもしれない。署長がレイシストクビにしたら3人しかいないし、残りのそいつらは同性愛を嫌悪してるみたいなこと言ってましたが、ディクソンはいつか自分が差別されるかもしれないとか内心ビクビクしてたのかな…?

※ここらへんは最後の方の考察追記その2でいろいろと。

 

 

  またフランシス・マクドーマンド同様、ディクソンもサム・ロックウェルを想定して描かれたキャラのようです。それだけでなく先程、セブン・サイコパスのビリーはタクシー・ドライバーのトラヴィスを意識していると書きましたが、マクドナー監督作品に出てくるサム・ロックウェルのキャラは全てトラヴィスなどから派生したキャラらしい。どれも孤独のようなものを抱えたキャラだとか。根は良いやつだし、本人は大切な相手のためを思って行動しているつもり…なのに暴走して何をやらかすかわからないというところも似てる。スリー・ビルボードでは鏡に映ったシーンで狂気や怒りが芽生えたあたりがトラヴィスを意識しているんじゃないかと思います。タクシードライバーの鏡のシーンって有名なんだな…

 

 表面的に一番わかりやすいのはセブン・サイコパス。映画を観るシーン・鏡に映った自分に話しかけるシーンがあるだけでなく、苗字が両方ともビックル。良い作品なので観たことない人は是非。

Playback Podcast: Sam Rockwell on ‘Three Billboards,’ George W. Bush – Variety

Sam Rockwell talks about 'Three Billboards Outside Ebbing, Missouri"

 

 ディクソンのキャラ設定に関しては下のリンクに色々書いてあったので興味のある人はぜひ読んでみてください。サム・ロックウェルの役にしては珍しく、短髪にしていることなど外見面で色々マクドナー監督と話し合った模様。

 

 サム・ロックウェルの重心変な感じしたの私だけかな…歩き方がカッコ悪いというか。一歩一歩が重苦しい。「 このサム・ロックウェル絶対踊らねぇな、踊ったとしても下手くそだろう 」っていう感じがしました。バット・バディ!のときはイケメンポジションなので、とにかくスマートな振る舞いで格好よかったんですが、今回は表面的にはダサくてクズで無能キャラだから意図的にそう振る舞っていると思いました。よく考えてるな~。

 

 スリー・ビルボードは人種差別や女性蔑視といったタイムリーな話題を取り上げていますが、それよりも愛、赦し、救済といったテーマを重点的に描いているとも言っていました。確かに、マクドナー監督のインタビュー記事を読んでもどちらかというと後者の方に重点を置いている印象。

Sam Rockwell Talks 'Three Billboards' & Playing George Bush [Interview]

Sam Rockwell: To The Moon and Back | FilmInk

52 Insights | Interview with Three Billboards Actor Sam Rockwell

 

★追加事項、ディクソンのイメソンについて

 この映画、挿入歌にめちゃくちゃ意味があると思いません?私はかなり気になってしまい、序盤のディクソンの鼻歌にも何か意味があるのではないかと思い調べた結果、以下のような記事が見つかったので紹介します。

That the London-born British Irish playwright and filmmaker Martin McDonagh chose this song to introduce the racist Dixon, played by Sam Rockwell, cannot be coincidental or merely the product of Marty Robbins fandom.
The song is an anthem of regret, but also an admission of guilt.
“Take me to the green valley, there lay the sod o’er me / For I’m a young cowboy and I know I’ve done wrong,” the song goes.
It’s a cry for mercy, and a fitting song for a character seeking renewal who doesn’t deserve it. But like all good folk songs, it morphs as the singer changes. When the Duke sings it, we hear one thing. When Joan Baez sings it, we hear a different experience altogether. “Streets of Laredo” is not a moral statement of purpose.

The Monsters in ‘Three Billboards Outside Ebbing, Missouri’ - The Ringer

  途中でHA!とか言っているのと、鼻歌なので挿入歌扱いにならずプロダクションノートにも記載がないので調べるのが相当大変でしたが…Marty Robbinsの “Streets of Laredo”という曲らしいです。下線部を訳すと「 悲しみの聖歌であるが罪を犯していることを自認する歌でもある 」となっています。…この映画とんでもねぇな。

 

★ディクソンのTシャツ

 ビリヤードのシーンで着ていたTシャツ、どうやら意味があるっぽい…?

 気になったのがこのツイート。

 

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ディクソンが着ているTシャツに描いてあるイラストは例のツイート曰はく、

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どうやら" Incorruptible "というアメコミの表紙らしい。

incorruptibleは(道徳的に)腐敗しない、清廉潔白な

redemptionは(過ちからの)救済 

という意味があります。

 

 このアメコミは日本だとほぼ無名なのかwikiが英語しかなくて詳しいことはよくわかりませんが、主人公と思しきMax Damageの紹介文に”A former supervillain turned superhero.  ”と書いてあるので、Max Damageはもともと悪いやつだったが、ヒーローになる、良いやつになるキャラらしい。詳しくはwiki見るなりしてください。

Incorruptible (comics) - Wikipedia

 

 …ということで、本編を観た方なら分かってもらえますよね?これに気づいた時すげえええ!って感動した。個人のツイートでしか言及されていないネタですが、もし意図的にこのTシャツをディクソンに着せたとすると、考えた人凄いとしか言いようがない。

(そのツイートがあまり話題になっていないのが気がかりではあるけど。)

 

 あと、2回目観たときに気づきましたが、ディクソンがクビになって漫画を持って出ていくシーンでもIncorruptibleっていう漫画持っていってました。しかも、タイトルをわざわざ見せるようにしてるあたり狙っているんですかね…

 

ミルドレッドとディクソンの覚醒シーン

 おそらく本編で肝になるところ。この覚醒シーンを通じて2人は大きく変化します。過去の行いがどうであれ人は変われること、赦すこと、怒るのは仕方がないが怒りは怒り以外何も生まないということ、大事なのは愛することだと言いたいのではないかと思います。かなり心に刺さるシーンでした。

 

 初めに覚醒するのはディクソン。上司のウィロビー署長の遺書で大事なのは愛であると言われ、これまでの酷い態度を改めミルドレッドの事件に真剣に取り組むようになります。愛っていうのは多分キリスト教でいうところの「 隣人愛 」みたいなものじゃないかなと思っています。差別とかいじめを止めて、誰に対しても思いやりを持って接してあげようみたいな。

 

 余談で、instagramで特殊メイク担当の人と思われる人がサム・ロックウェルの特殊メイク画像上げてくれたのですが、思ったより痛々しい。

https://www.instagram.com/p/BcJgCx2BpVK/?taken-by=coreymakeup

 

 次に覚醒するのはミルドレッド。署長の手紙はあまり響かなかったみたいだが…きっかけは元夫の若い恋人の一言。”Anger begets greater anger.” 字幕では「 怒りは怒りを来す(きたす) 」。怒りは大いなる怒りを生むということを言います。まさか、あのバカっぽい恋人が言うことになるとは…。この一言が無ければミルドレッドはどうなっていただろうか。

  

 

映画で紹介された多くの事実関係

カトリック司祭がレイプした話

→スポットライト世紀のスクープ( アカデミー賞作品賞受賞作品 )

 ボストンとその地域で蔓延していたカトリック司祭による性的虐待事件に関する報道について描かれた映画。

 

・ワイオミングのゲイ殺し

→ワイオミング、ララミー事件

 ブロークバック・マウンテンのことだと思います。

 

キューバのゲイ殺し

→タイトルは出てこなかったですが、ハビエル・バルデムの映画と言っていたので、多分「 夜になるまえに 」のことだと思います。

 

・国家機密だから言えないけど、砂が多いところ

イラクのことらしい。( バカなディクソンはこれがさっぱり分からなかった )

 私もトークショーで解説無かったら、わからなかった笑。警官がボケてるのかと思ったらそういう意味ではないみたい…

 イラク戦争時、アメリカ兵がレイプして遺体を焼き殺した事件がありました。ミルドレッドの娘と同じ状況ですね。おそらく、リダクテッド真実の価値という映画で基になったマフムーディーヤ虐殺事件のことじゃないかと。

 

放送禁止用語Cxxtについて

 C*NTのことです。意味は女性器、馬鹿女とか。洋画でもFxxkより聞く頻度が低いと思いますが、これは放送禁止用語の中でもかなりヤバい。なので、この言葉が家庭内で出るのは相当荒れてることの表れだとか。

 

 Old C*ntと罵られて「 oldは余計だよ 」っていうセリフがありますが、おそらく「 直すとこoldじゃねぇ、『 そこはc*ntは余計だよ 』だろ! 」って観客がツッコむところ。これは英語圏の人にはバカウケしたんじゃないかな。逆に英語圏以外、この手のものに詳しくないと、上手く笑いにはならないネタ。これは教えてもらわないと気付かなかったのでありがたいです。

 

  この映画、めちゃくちゃ放送禁止用語が多くて、字幕でそのニュアンス伝えるの大変だろうなと思いました。特にFワードはアメリカのテレビで言ってしまうと問題になるくらいなので、単に日本語でクソって訳すとそこまでヤバさを感じないという…難しい。特にアメリカ( 英語圏全般かな? )はエログロ無くてもFワード・放送禁止用語連発するだけで映画のレーティングが上がったりするので言葉に関しては厳しい。

 

途中で出てきた鹿は何を意味するのか

 鹿が出てくるシーンがあり、殺伐とした雰囲気の中であの部分だけほのぼのとしているという話がありました。この鹿はいったい何なのかについてですが、これはプラトーンのオマージュじゃないかと言っていました。( プラトーンでは鹿は尊敬した人の生まれ変わりらしいです。 )

 ちなみにスリー・ビルボードの鹿は本物ではなくCG。なんかチープだったような…

 あの鹿は本物ではないかという指摘を受けたので修正します。個人的に光加減からなのか、滑らかさが不自然に感じてしまったのか、ちょっとチープなCGにしか見えなかったのですが…ちゃんとモデルの鹿がいるみたいです。

Oh deer! WNC Nature Center animals will be part of scene for 'Three Billboards' movie | WLOS

本編ではこんな感じです。私含めCGだと思っている人が結構いたような気がする…一体何がそんなにCGに見えてしまったのか…

やっぱり見直したんですけど、それでも怪しいなぁ…別にストーリーに関係ないのでいいんですけどね

youtu.be

www.fxguide.com

 …どうでもいいやって思った矢先に見つけてしまったので載せときます…こうやって撮っていたのか。ハリウッド中規模作品でCGあまり使わなさそうなジャンルでも意外と使っているんだな…

vimeo.com

  

ラストについて

 ディクソンが例のレイプ犯( 娘をレイプした犯人ではない )を殺そうとするため、ミルドレッドを誘ってアイダホに行こうとします。そいつが殺したわけではないのに殺しに行こうとするあたり、もはや復讐ではなく「 必殺仕事人 」みたいだと話していました。

 

★ロケ地ノースカロライナ州

 ロケ地紹介記事。撮影前後の比較画像とか、ディクソンの殴り込みシーンのメイキング動画っぽいのも。映画ってこういう風に撮影するのか。

www.discoverjacksonnc.com

 

 

★細かすぎるデザインネタ ニルヴァーナ

 アンジェラの部屋にはニルヴァーナのポスターがあります。ニルヴァーナとか意外とシブい趣味だな(偏見)とか思っていたのですが、…ってか全体的に可愛らしいというより、シブいよね?隣の大きいポスターとか。田舎だから新しい情報はあまり入ってこないんですかね?

 

 それはさておき、このポスターデザインのアルバムのタイトルはイン・ユーテロ。で、アルバム内にはレイプ・ミーっていう曲があるんですよね…これは狙ってる

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THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI | Official Trailer B | FOX Searchlight - YouTube

 

ミズーリからアイダホの距離は?

 ミルドレッドとディクソンがアイダホに向かうシーンがあり、トークショーミズーリの場所は覚えたしせっかくだからということでアイダホまでの距離を調べたのですが…

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 嘘だろ…グーグル先生によると車で丸1日だそうです。(1593マイル)アメリカの州の場所とか詳しく知らなかったのでビックリしました。これだけでロードムービー作れそう。

 

★作中のアイルランド要素は?

 マクドナー監督はイギリスの中でもアイルランド系の人です。マクドナー監督作品にはアイルランド要素があり、過去作品のヒットマンズ・レクイエムとセブン・サイコパスの主役にはアイルランド俳優のコリン・ファレルを起用しています。

 

 ただし、スリー・ビルボードのメインキャスト3人はアメリカ人、舞台もアメリカのド田舎…とアイルランド要素が珍しく無いなと思っていたのですが…挿入曲を調べたらありました!

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 劇中で使用されているのは”The Last Rose of SummerーPerformed by Renee Fleming, Jeffrey Tate” 「 夏の名残りの薔薇 」というアイルランドの詞です。日本版にアレンジされたものもあり、「 庭の千草 」というタイトルになっています。

 歌詞の最後を意訳すると「 愛する人がいなくなったら、誰が一人で生きていれるだろうか 」という感じになるのですが、ミルドレッドの心の叫びみたいに感じました。

 

★あの英単語の別の意味(3月に付け足しました…)

 この映画、英語に詳しい人・ネイティブの方が何倍も楽しめると思います。本当に。2回目観るときとか英語が得意な人は字幕追うだけでなく英語を聞くのに集中した方が良かったりするのかもとか思います。

C*NTとか前の方でも書きましたが、付け足し。

①Will

 看板が燃えた後に予備のやつに張り替えるシーンで業者の青年が署長の名前はどうすんの?って聞くシーンで「WILL」と書かれた文字を見せるシーンがあります。署長の名前の一部です。willって普通、未来形で使うやつって思う人が大半だと思うのですが、willを名詞で調べると、遺言・意志・(神の)意とかいう意味があります…もうわかりますよね…

②Missiouri

 これは作品とは直接関係ありませんが、舞台がミズーリ州なので…

 アメリカの州には愛称があるそうです。その中には納得できるものから、は??って思うものまで様々。ウィキで調べると面白い。例えばニューヨーク州ならThe Empire State。カリフォルニア州ならThe Golden State。なんとなく分かる気がする。

 じゃあ、ミズーリは?というと…

 

「The Show Me State 疑い深い人の州」

 

…は?なんか愛称って言っていいのか。どうやら歴史的背景があるらしいんですけど、まだちゃんと調べ切れていません。あとヤバそうなのはアイオワとか。でもミズーリほどじゃないような

 ジーニアス英和で調べたところ、I'm from Missouri ( show me )で証拠を見せられるまで信じませんよ。という意味が書いてありました…電子辞書には載っていなかったのでかなりマイナーな言い回しだと思いますが、こういう意味があるとはビックリ。

 ちなみにアイダホ州の愛称はThe Gem State、宝石の州。

 

IMDBトリビア

 IMDBに投稿された小ネタなんですけど、なるほどってなる小ネタがいっぱいあります。Incorruptibleの話も…

www.imdb.com

 

 

個人的な考察

※他の人のレビュー、考察を見て思ったのが実に様々な考え、解釈があるということ。ここまで解釈が割れるのも珍しい。まさか、人間はこの映画より多様だということを見越しているのか⁉ というわけで、この考察が絶対ではないです。へ~そういう考えもあるのか~ぐらいの気持ちで読んでもらえればと思います。
 
 書きたいことが多すぎてかなり長くなってしまった。コンパクトにまとめるプロの批評家って凄いんだな。そしてマクドナー監督め…3作目でよくもこんな作品作りやがって!という気分。こんないい映画に出会えて本当によかった。
 
 実力派曲者俳優による最高のバカ騒ぎ映画って感じで完全にエンタメに振り切って楽しむこともできる。マクドナー監督作品の魅力は役者の使い方の上手さだと私は思う。若手からベテラン、メインからサブまでそれぞれ見せ場があって凄くよかった。若手陣はこれからの活躍が楽しみです。キャストの中でも特に複数作品観てきたサム・ロックウェルはかなり魅力的なキャラだと思った。セブン・サイコパスでの使い方が上手く、サム・ロックウェルを好きになったきっかけでもあるので、この部分は鑑賞前に相当ハードルを上げてしまったものの、むしろ予想を越えてきてビックリした。アカデミー賞助演男優ダブルノミネートかつ初ノミネート初受賞っていう快挙を成し遂げてほしいな…( 助演男優ダブルノミネートだけでも20年以上ぶりだそうです。 )
 
 ウディ・ハレルソンも良かったです。今まで観てきた役は良いやつでも荒っぽさがあったり、怖いキャラが多いなという印象でした。予告編ではオラついてる感じだったので今回もそんな感じかと思いきや、まさかああなるとは…良い意味で裏切られた。2回目観たら前よりも良さが増してました。1発でガッツリ来るサム・ロックウェルとは違い、ジワジワと良さが来るタイプですね。良さのベクトルが違うというか。スルメみたいだな。この二人はいろんな作品を観ている人なら曲者俳優ならではのテンプレを裏切る感じでかなり嬉しい使い方かもしれない。もう私の中のアカデミー賞助演男優賞はウディとサムの2人で決まり!!ありがとう、マクドナー監督。
 
 あと、FOXサーチライトマガジンのパンフレットが素晴らしすぎて感動した。値段以上の価値はありました!1月上旬のゴールデン・グローブ賞の写真があったのにはビックリした。読む用、保存用で2冊買っても良かったかもしれない。他の映画もここまでクオリティ高かったらどの作品でも買ってるだろうなぁ。アカデミー賞前に公開してくれるし、日本配給のフォックスさんありがとう。シネコンなのに手作りポップで宣伝してくれた名古屋のミッドランドスクエアシネマありがとう。ミニシアター系でしかこういうの見なかったので。配置がちゃんと3枚の看板風にしてあって良かったです。ごめん、人目気にして写真撮れなかったけど。こないだレイトで観たとき撮ってきました。こんな感じです。ここはマイナーな作品も意外と上映してくれるので嬉しいですね。……あれ?さっきからありがとうしか言ってないな??

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 ただ、考えさせられる映画でもあるし、実際いろいろ物思いにふけっていました。脚本とキャラの作り込みが上手くて、あのキャラの過去は〇〇じゃないかとか、どんなことを言いたかったのかとか。最初に東京国際映画祭で観たときは夜行の中でああだこうだと考えまくって寝れなかった覚えが…バスは揺れるし興奮で寝れないしで頭パンクしました。観た人と語り合う機会があったら面白そう。ってかそういう機会がほしくて仕方がない。
 
過去作品と比べて思ったこと

  マクドナー監督作品を3作観て思ったのは、マクドナー監督作品の登場人物って良心の欠片のないような極悪非道なキャラが出てない気がする。逆に聖人君子みたいな非のない良いとこだらけの人もいなかったような。一見クズ・非道なキャラでも、どこか優しさみたいなものが垣間見えるときがあったりして、設定は非現実なのに妙にリアルで人間味があり、普遍的でかなり人間臭い。それとヒットマンズ・レクイエムでも思ったことだが、登場人物が不器用。スリー・ビルボードではその人間臭さ、人は単純に白黒区別をつけられないという曖昧さが凄く出ていました。人って本当はその境界が曖昧なんだと思います。最近は何でも白黒二分する論調が流行っているみたいですが。

 

 それと、マクドナー監督作品ってバイオレンス描写とか一見容赦なさそうに見えて実は優しいんじゃないかっていうのも思いました。妙に温かみがあるというか。バイオレンス描写、殺伐とした雰囲気のなかで重苦しくなく、笑えて、なぜか優しい気持ちになれちゃったりするっていう…あれもこれもいろんな要素全部ぶっこんでやるぜ!みたいなのはあまりないんじゃないかな。

 

 今作はよそ者の物語ではなく元々そこに住んでいる人たちの物語っていうのが過去作との違いじゃないかと。( ヒットマンズ・レクイエムは殺し屋が休暇がてらブリュージュに滞在する話、セブン・サイコパスアイルランドの脚本家がハリウッドで脚本を作る話。といったようにこれまでは主人公がよそ者という設定でした。  )舞台は知らないので、なんとも言えないですが、そういう意味では新たな試みだったのかもしれない。

 

 過去作品との違いとか共通点を表に簡単にまとめてみました。需要あるかどうかはさておき。 ( 若干追加しました。 )

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ラストについて

  あの音楽や雰囲気からして個人的に二人は殺さないんじゃないかと、なんとなく思っています。微かに希望が見える感じ。特にミルドレッドの笑顔が印象的だった。

 

 とはいえ、こういうことを思いつくのは怖いというか狂気というか。悪い奴にしても直接の加害者ではないので。二人とも事件解決のため、娘のためとしているものの行き着く先は自分が正しいと思った道をひたすら進んでいるような。娘を殺した奴に「 復讐 」するというより、自分たちの「 正義 」を優先しているのと、改めて良いとこだらけの完璧な人はいないと感じました。その行いが娘のためになっているのか微妙なところ。欠点のない完全な人だったら犯人でもない奴を殺そうという発想が浮かぶかな?その策に乗ろうとするかな?という。

 

 ラストはおそらく賛否両論でしょうが、人の曖昧さ、憎しみは憎しみしか生まない、辛いことがあっても人生は続いていくんだってことを伝えたいんだろうなと考えると、良い終わり方じゃないかと思います。いろいろ言いたいことがあのシーンには詰まっているのではないかと。レイプ犯見つかって事件解決!やったね万歳!とか行きついた先でレイプ犯殺してスッキリしたぜ!みたいな、そういうハッキリした勧善懲悪的な話じゃないですし。

 

世相とアカデミー賞とミルドレッド

 アカデミー賞作品賞候補の中でも上位の候補なんですよね。トロントでも観客賞を受賞してかなり評価の高い映画であることは間違いないのですが、作品賞獲れるかもぐらいのポジションまで来るとは思っていませんでした。

 

 これには2つ理由があって、マクドナー監督は作家性が強く、過去作品を観た人なら分かると思いますがオスカー向きの作品を作る人ではありません。( 受賞・ノミネート経験はあるが1作品で複数ノミネート、作品賞ノミネートは過去に無い。 )もうひとつは、今年はハリウッドでのワインスタイン事件をきっかけに女性がより注目されるだろうと過去記事に書きましたが、正直#metooやTimes up( もうセクハラは終わりにしよう )、ゴールデン・グローブ賞の黒衣装など、あまりに大きなムーブメントになるとは予想していなかったからです。( 多分これがメイン )

 

 スリー・ビルボードは偶然にも「 娘の性犯罪で苦しむ女性が、周りからの非難を受けても権力( 警察 )に立ち向かうという 」構図が表面的にはこのムーブメントに大いにマッチしています。そして他作品に比べかなりメッセージ性が強い。他の有力候補も女性主人公が強く生きる物語で、今年は女性主人公作品が獲る可能性がほぼ確実。( ミリオンダラー・ベイビー以来? )

 

 これが無かったら、作品賞有力候補が社会派・トランプ政権を意識したペンタゴン・ペーパーズや大ヒットしたノーラン監督のダンケルクだった可能性は大いにあったんじゃないかと。オスカーってぶっちゃけ配給会社の強さとタイミングが大事ですよね…最近はメッセージ性も求められるし。今年は特に求められそう。

 

 スリー・ビルボードを今年の世相を反映する作品だとして、

「 理不尽なことが溜まれば、怒りはいつか一気に噴出する。それは珍しいことではない。そして理不尽を怒り、正義感から立ち上がることにより周りを動かすことになるだろう。ただ、暴走してその怒りや正義感の矛先を間違えると、誰かを傷つけることになってしまう。 」

ってことをミルドレッドを見て考えていました。

 

 自らの正義感を信じて疑わずひたすら突き進む姿は潔いまでに「 凛々しく、格好よくみえるはず 」。大抵のフィクションでこの手の主人公は格好いいキャラだ。しかも被害者の母親となれば、同情も集めやすく思わず応援したくなる。しかし、スリー・ビルボードでは物語が進むにつれてミルドレッドのその姿勢に疑問符がつくようになっていく。最初の方は汚い言葉を使いながらも虫を助けたりといかにも「 いい人 」って感じだったのに。最後まで観ると「 格好いい、憧れる 」存在とは言いにくい。どちらかというと、格好悪くてもいい。それでも自分なりに生きていくんだ、というのを強く感じました。惹かれるとすればその懸命さだろう。ミルドレッドは「 被害者の母親 」という神格化した特別な存在なんかじゃなく、あまりにも不器用な人間だ。

 

 自らが正しいと過信して省みず、過度に己の正義感を振りかざし突き進むこと、そういう風潮は時に他の誰かを傷つけることになるのではないかと痛感したと同時に、ミルドレッドのようになることは決して特殊なことではないと思いました。もしかしたら無自覚にやっているのかもしれない。非現実的だからこそ普遍的な事って見えてくるんですかね。

 

考察追記

  先日、昨年含め3回目観てきました。そこで思ったことについて書いておきます。この映画本当に考えさせられる…容易に結論出せない、出させないの凄い。メインキャスト3幕仕立ての舞台のみたいなところもあるし、鑑賞後の感覚が小説読んだ後みたいで不思議。ボリュームがテレビドラマなんじゃないかってぐらい人物描写がすごいと改めて感じました。結構過激なことするものの、どのキャラにも愛着がわいてくる…

 

 この映画のテーマは「 赦し 」が含まれていると書きました。ただ、それにしては違和感というか腑に落ちないところがありました。それは、本当に「 赦し 」かということです。特にディクソンについてですが、前半かなりやらかしています。後半は真っ当になろうとしているが、それを「 赦し、完全に改心 」したとは言い難いし完全にチャラにならないとは言えないのではという疑問がわいてきました。レイシストとかいう腹立たしい白人のクズだから 」赦しちゃいかんとかそういうわけではないです。明確なきっかけはあるけど、人ってファンタジーの浄化シーンのごとく大きく変わるんか?という。警察のガバガバっぷりとかは物語の都合上意図的に現実離れさせてると思いますが、その分肝心の人間関係・人物描写は現実離れさせてないような気がしてならない。赦し、極端に言うと赦しきった・オールオッケー、というより赦そうとする、赦そうと試みる、償おうとする、悔い改める初めの一歩といったほうが近いのではという気がします。レッドがオレンジジュースのストロー向けてあげた優しさもあれが精いっぱいという意味では赦しというより赦しの一歩という感じ。大ヤケドで痛々しい姿じゃなかったらあのオレンジジュースがどうなっていたか分からないです。また観たら、考えが変化しそう…カタルシスを与えてくれる作品ではないので現在進行形で露頭で置いてけぼりにされている気分です。

 

 あとは折り合いをどう自分の中でつけるかっていうのも感じました。犯人が見つからないことに対して自分の中でどう折り合いをつけるのか、人生の出来事で常にベストの着地点があるとは限らない、第二・第三の着地点をどうするのかっていうのも言いたいことなんじゃないかなと思いました。

 

追記その2

アカデミー賞受賞記念に観納めてきました…フランシス・マクドーマンドサム・ロックウェル、受賞おめでとうございます!

 

タイトルとラストについて
 マクドナー作品の中でタイトル付けがぶっちぎりで上手いと思います。スリー・ビルボードの原題がThree Billboards Outside Ebbing, Missouri って考えるとやっぱラストは二人がアイダホに向かおうとするあのシーンしかない。( ラストについては上の方でも言及しています。)どこでもいいわけじゃなくて「 ミズーリ州のエビング 」なので。もし、ラスト以降も描くならoutside以降は要らないことになるし、白黒区別つけないあのグレーのグラデーションが作品の肝なのに魅力が薄れてしまう。


 地名まで入れるのはファーガソンとか南北戦争のこともあるかもしれないけど、こういう単純に物語単体で考えてもちゃんと意味のあるタイトルだなと思いました。

 

ディクソンとレッド

 ディクソンがレッドに妙にべったりだったのが凄い気になった。まさかアレじゃないよな~って一瞬思わなくもないですが…自分のことをよく見てほしい知ってほしかった、相手にしてほしかったって感じがしました。( ただし接し方が下手 )

 

 何の前触れもなくいきなりキューバではゲイが殺されるんだという話を振り、自分は反対だって聞かれてもいないのに言うあたりが…レッドはディクソンと違いヘテロだけど( 多分 )、若いし優しいから( 女がいないことをからかう母親や、他の差別意識丸出しな警察仲間とかと違って )本当の自分を理解してくれそうみたいに思っていたのかも。署長が知っていたとはあの手紙を読むまで思ってないと思う。町山さんは署長に叶わぬ恋を抱いていたと解釈していますが、署長はどちらかというと、頼れる数少ない大人や父親ポジションのような。


 ABBAの曲聞いてたシーンで微妙に他の警察仲間から疎外感を感じたのと、巡査部長の態度からして警察内であまりいい印象を持たれていなかったのでは…ちゃんと見ていてくれたのは署長ぐらい。本人が呆れられているのを自覚できていないあたりがなんか切ない。

 

何だかんだでみんな優しいところはある

 声高にキレたり、侮蔑語言いまくったりしてる登場人物が大半ですが、ちゃんと思いやる場面があったなと。印象に残ったのが、

ミルドレッドに吐血がかかるときにミルドレッドが心配するシーン

署長の手紙は決して本人以外は読まない

オレンジジュースのシーン

ディクソンがボコられたときに看板業者の兄ちゃんが注意するシーン

…どれも本編とは逆のことが起こってもおかしくないところだった。オレンジジュースぶちまけたり。特に最初のは本当の憎しみの対象は署長でないことが分かるいい場面だったと思います。最後のやつはデニースがクズ野郎がいるわって言っていたので見逃すか、ざまぁってなると思ってた。ごめんなさい。

 

セリフが効いている

 怒りは怒りを来すといい、印象に残るセリフや過去のシーンとリンクさせてあったのが良かったです。警官のバッジや署長がそのうちホラ話で出てくるだろうって言ったのなど、マーティン・マクドナー凄い!!って思いました。私、映画のセリフとかあまり覚えられないのですが、今回はちゃんと覚えられているあたり印象に残っているんだなと。

 

プロダクションノート、脚本

 米フォックス・サーチライト・ピクチャーズのプレスサイトにプロダクションノートが掲載されていたので紹介しておきます。登場人物紹介、キャスト・制作陣紹介、サントラには入ってないがエンドロールに掲載された挿入歌などありとあらゆる情報が載っています。サーチライトさんは色んな情報を提供してくれるのでありがたいです。

 古い作品は消えていますが、スリー・ビルボード以外にも年内に公開された作品であれば掲載されているので読んでみると面白いかも。

Fox Searchlight: Pressroom

 

 脚本もpdf形式で掲載されていたので紹介しておきます。あのセリフ何て言っていたかな?とか調べるのに役立つと思います。

 ちなみに脚本については「 作品名 screenplay pdf 」でググると古い作品でもネット上に転がっている可能性があります。

SimplyScripts Battle of the Sexes, The Shape of Water, and Three Billboards Outside Ebbing, Missouri screenplays for your consideration | SimplyScripts

 

 スリー・ビルボードの批評家、オスカー会員向けサイト( だと思う )

 他の配給でここまで作りこんでいるサイトあったかな…?アカデミー賞有力候補なのか、かなり気合入っている印象。インタビュー動画など、サントラの視聴もありました。ここから脚本のダウンロードも可能。

Fox Searchlight - Three Billboards Outside Ebbing, Missouri

 

 

 この記事を読んで解釈の足しなどにしてもらえれば幸いです。何かあればコメ欄の方まで。(中傷や記事内容に関係ないもの以外であれば歓迎です。)

 こんなに長いのに、最後まで読んでいただきありがとうございました。

(なんと16,000字もあった…原稿用紙40枚超え…)

 

ふみ